身体活動バイオメカニクスの定量的評価法確立に向けた探索的研究

研究の意義

近年、スポーツ活動への関心の高まりやスポーツ活動に従事する人口の増加がみられますが、運動を含む日常生活動作(ADL:activities of daily living)での活動量を評価し、スポーツ活動などにおける活動量の質や量を適正化することで、健康寿命の延伸やスポーツパフォーマンスの向上をはかることができます。

これまで、歩数計などにより身体活動(PA:physical activity)を評価する試みも成されてきたものの、活動の強度(単位:METs(metabolic equivalents))が反映されず正確な評価は困難でしたが、加速度センサー内蔵型のウェアラブルセンサーデバイス(WSD:wearable sensor device)が発展・普及し、身体活動(PA)を歩数のみならず活動強度(METs)を含め評価することができるようになり、かつ小型で軽量なため装着に伴うスポーツ活動・日常生活への支障や不快感もほぼありません。

ウェアラブルセンサーデバイス(WSD)を用いた、フィールドやADLにおける身体活動(PA)の客観的かつ正確な評価法の確立は、スポーツ医学・医療の発展や健康寿命延伸・スポーツパフォーマンスレベル向上につながる、科学的および社会的意義の大きい研究です。

研究の目的

本研究は、スポーツ活動場面やADLにおいて、身体活動(PA)を客観的で再現性高くかつ正確に評価できる方法の確立を目指し、データを網羅的に収集し解析することで、最適な評価法を探索することを目的とします。

本研究を通じた最終的な目標は、スポーツ医学・医療の発展、アスリートを含むスポーツ活動に従事する方のパフォーマンス向上、さらにはすべての方を対象とした健康維持・増進や健康寿命の延伸をはかり、豊かな社会生活の実現に寄与することです。

研究の対象 本研究は、アスリートを含むスポーツ選手やスポーツ活動に従事する学生、および大阪大学が位置する豊能医療圏(吹田市、豊中市、箕面市、池田市、豊能町、能勢町)を主とする地域在住の方で、ボランティアでの各種データ計測および提供に協力いただける方を対象とします。
実施施設および期間・予定者数

本研究のデータ計測・収集は、大阪大学医学部附属病院・整形外科、大阪大学大学院・医学系研究科・健康スポーツ科学(スポーツ医学)教室、大阪大学大学院・医学系研究科・健康スポーツ科学(運動制御学)教室、大阪大学内外の各種フィールド(グラウンド、コート、体育館、学校、園など)、および学外の日常生活場面において行われます。得られたデータの解析は、大阪大学大学院・医学系研究科・健康スポーツ科学講座に集約化して行います。

本研究の実施予定期間は、大阪大学医学部附属病院・倫理審査委員会による承認後、大阪大学医学部附属病院長の研究許可日~2025年3月31日まで、5年間で約1000例(患者さん 約500例、健康な方 約500例)の方の参加を予定しています。

方法および予想される不利益・負担

ADLやスポーツ活動場面(スポーツ大会・イベントやフィットネスジムなど)において、心拍計・GPSやスマートホン内蔵アプリケーションなどのウェアラブルセンサーデバイス(WSD)を用いて、数時間~数週の時間幅で身体活動(PA)に関するデータを計測します。

データの解析は、IoT(internet of things)によるクラウドにおいて一元的にデータベース化し、個人間やグループ間での比較や個人内での時間・空間的変化の中での比較を通じて、スポーツ外傷・傷害の発生や健康増進との関連性を明らかにします。最終的には、得られた結果を各個人やスポーツチームに還元することで、スポーツ外傷・傷害の受傷・発症予防、さらにはスポーツパフォーマンス向上や健康寿命延伸などに寄与することを目指します。

本研究への参加により予想される不利益は特にありません。各種データの計測や解析は無償であり費用の負担はありませんが、計測に際しての時間をいただく必要がございます。本研究におけるデータ計測中の動作などで健康被害が生じた場合の補償はありませんが、研究担当者である医師が最善を尽くして適切な処置と治療を行います(ただし、費用は通常の診療と同様に健康保険による自己負担となります)。

個人情報の保護・研究成果の取扱い

本研究は、あなたの個人情報を守った上で行われます。本研究に参加するすべての研究対象者は、初回のデータ収集時に個人識別番号(ID)を割り振ることで匿名化され、対象者の個人特定情報(年齢、性別、身体検査情報、スポーツ外傷・傷害の治療歴など)とIDの対応表を別に作成し、計測機器から得られたデータは対象者IDにて管理することで、個人特定情報の保護に努めます。実際の計測データからは必要に応じて個人特定情報を削除し、一元的に収集できるデータベースをIoT(internet of things)によるクラウドに作成し管理することで、情報漏洩等からのセキュリティ対策とします。さらに、データベースへのアクセス権限は研究の責任者と分担者のみに付与しますが、それぞれの立場に応じて階層的にデータベースへのアクセス制限を設け、さらに必ずセキュリティソフトによる対策が成されたPCからネットワークを介して接続するように徹底します。

なお、本研究の成果は学術集会や医学雑誌等に発表されることがありますが、このような場合でも個人特定情報は削除して発表し、あなたの個人情報が公表されることは一切ありません。本研究により得られたデータは、研究終了報告日から5年、または研究成果の最終公表日から3年、または学術論文等の発表から10年、のいずれか遅い日まで保管し、適切に廃棄いたします。

利益相反(企業との利害関係)について 本研究は、研究責任者のグループにより公正に行われ、本研究に関する企業との利害関係についてはありません。本研究は、大阪大学大学院・医学系研究科・健康スポーツ科学講座が採択された、公的な研究費(科研費、スポーツ研究イノベーション拠点形成事業(SRIP:sports research innovation project)、Society 5.0実用化研究拠点支援事業、科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(DESIGN-i)事業、SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム事業)で実施します。研究責任者および分担者が個人的に利益を受けることはなく、この研究の実施や報告にあたり、個人や組織の利益のために公正な判断を曲げるようなことは一切ありません。
別研究や事業に情報を提供する可能性

本研究で得られたデータや解析結果を、文部科学省「Society 5.0実現化研究拠点支援事業」で採択された「大阪大学ライフデザイン・イノベーション研究拠点(iLDi:initiative for life design innovation)」の健康・スポーツプロジェクトに提供する場合があります。

大阪大学ライフデザイン・イノベーション研究拠点(iLDi)について

(http://www.ids.osaka-u.ac.jp/ildi/index.html)

事業区分:文部科学省「Society 5.0実現化研究拠点支援事業」

(Society 5.0・・・IoTビッグデータ・ロボット技術・人工知能(AI:artificial intelligence)等のイノベーションを産業や社会生活に活用し、サイバー空間(仮想現実)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、人々が活力に満ちた質の高い生活を実感できる社会)

研究代表者:東野 輝夫、大阪大学大学院・情報科学研究科・教授

拠点長:西尾 章治郎、大阪大学・総長

研究内容:人々の医療・健康情報であるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR:personal health records)と、日常生活・職場/学校での活動・食事・スポーツ活動など、日常生活の様々な活動データを加えたパーソナル・ライフ・レコード(PLR:personal life records)により、QOL(quality of life)の維持・向上を目指した「ライフスタイル」研究、心と体の健康増進を目指した「ウェルネス」研究、楽しみと学びを実現する「エデュテインメント」研究を推進することで、人と日常の健康・生活の関わりから、身体の健康・心の健康・社会的健康(コミュニケーション)・環境の健康を基軸にして輝く人生(高いQOL)をデザインし、技術革新と社会経済環境の変化を大学から発信することを目指します。

研究実施体制 【研究責任者】

中田 研・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・教授

【研究分担者】

前 達雄・大阪大学大学院 医学系研究科 運動器スポーツバイオメカニクス学 共同研究講座・特任教授

田中 啓之・大阪大学大学院 医学系研究科 運動器スポーツ医科学 共同研究講座・特任教授

山崎 慶太・大阪大学大学院 医学系研究科 国際未来医療学 特定講座・特任准教授

蛯名 耕介・大阪大学大学院 医学系研究科 運動器再生医学 共同研究講座・特任講師

金本 隆司・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・助教

小笠原 一生・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(運動制御学)・助教

近田 彰治・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(運動制御学)・助教

横山 光樹・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・助教

大貫 崇・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・特任研究員

佐藤 睦美・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・特任研究員

大堀 智毅・大阪大学大学院 医学系研究科 器官制御外科学(整形外科)・医員

木村 佳記・大阪大学医学部附属病院 リハビリテーション部・理学療法士

佐藤 世羅・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

宮﨑 亮・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

大谷 俊哉・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

鵜野 裕基・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

稲葉 龍一郎・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

梅垣 果歩・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

浮本 祥・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

多久和 良亮・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

南保 恵・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学)・大学院生

宮川 基・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(運動制御学)・大学院生

Tei Kohten・大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(運動制御学)・大学院生

大久保 伸祐・大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻(数理保健学研究室)・大学院生

研究対象者又はその代理人の求めに応じて、対象者が識別される情報の利用を停止することができます(その際は右記に御連絡ください)。 【連絡先(事務局)】

1) 大阪大学大学院・医学系研究科・健康スポーツ科学講座
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2−2
Tel : 06-6210-8439 (スポーツ医学教室)
Mail : research_optout@mspa.med.osaka-u.ac.jp
<研究担当者> 小笠原一生 (助教)

2)大阪大学大学院・医学系研究科・健康スポーツ科学 (スポーツ医学)
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2−2
Tel : 06-6210-8436
<研究責任者> 中田 研 (教授)